1 2021年9月16日(木)午後3時、建設アスベスト東北訴訟の第5回弁論が開催されましたので、同口頭弁論期日の内容・報告集会についてご報告いたします。
2 第5回口頭弁論期日
⑴ まず、裁判所が、原告側と被告側で、期日前に提出された準備書面や証拠を確認しました。被告ニチアスは、原告の本訴訟での主張に対し、概括的な反論の準備書面を提出していました。一方、原告らとしては、原告7名のうち、3名について、個別に被告の特定や作業内容を特定する準備書面や陳述書他書証を提出していましたので、これらを確認しました。
⑵ 次に、弁護団太田伸二弁護士が、被告メーカーらの共同不法行為責任について、要旨として以下のとおり意見陳述をしました。
神奈川1陣に関する最高裁判決では、被告メーカーらの行為と各被災者の損害との間の因果関係の立証責任(原則的には原告にある)を転換させることを認めたこと、及び東京1陣に関する最高裁判決では、被告メーカーらの製造販売する石綿建材が、各被災者の作業する建設現場に相当回数にわたり到達したことの立証方法につき、厳密な意味での立証を原告らに求めず、以下の簡易な手法を認めました。
すなわち、まず、①当該原告にとってその罹患した石綿関連疾患の主たる原因となった建材(主要暴露建材)を特定します。具体的には、当該原告の職種が取り扱う石綿建材の種類を特定し、さらに当該原告の作業内容、作業態様、石綿粉じん暴露実態、流通・出荷量等から、罹患の原因となった石綿建材の種類を特定します。また、独自の作業経験や就労実態を有した人に関しては発症の主要な原因となった石綿の種類をも主要暴露建材に加えます。
次に②特定した主要暴露建材(石綿建材の種類)については、なお複数(多数)の製品、建材メーカーがあることから、それを国交省データベースによって製品毎に使用される建物の種類の特定、石綿建材の種類によってはシェアが明らかとなっているものがあることから、シェアが概ね10%以上を有するメーカーを絞り込みを行う等といった手順で共同行為者を特定します。
このような共同行為者の特定方法の概要を踏まえ、大工・内装工を例に挙げてさらに分かりやすく説明した上で、本件訴訟でもこのような手法を用いるべきだと主張しました。
⑶ 最後に、次回の第6回口頭弁論期日が令和3年11月22日(月)15時と指定されました。
3 報告集会
⑴ 仙台弁護士会館401号室において報告集会が開催されました。
⑵ まず小野寺義象弁護団長から、今回は原告ら7名のうち3名について、被告の特定を行い、作業内容等をも具体化する等、大きな進展があったこと、残りの4名についても、次回までに同様の特定を行う予定であることが報告され、被告らの総論的な反論が次回または次々回までに出されることから、被告メーカーらとの間での紛争が本格化していくが、弁護団もさらに力を入れて取り組んでいくことが報告されました。
⑶ 会場からの発言として、仙台錦町診療所医師の広瀬先生から、最高裁判決を受けて、補償を受けられると期待する人が増えるが、事前に、医師と弁護団が連携をして、提訴するべき事案か否かを判断していく必要性について意見をいただきました。また、中皮腫・じん肺・アスベストセンター事務局次長の尾形さんからは、新規の相談者から、私腹を肥やした被告メーカーが責任を取らないことについて許せない等という話も多く聞き、まだまだ救済すべき方がいること、アスベストセンターとしても本訴訟や第2陣提訴に向けてできる限りの協力をしたいというお言葉をいただきました。
4 次回第6回口頭弁論期日は2021年11月22日(月)15時
次回からは、原告ら4名について個別の原告の作業内容の主張立証、被告メーカーらの責任についての主張等を行う予定である一方、被告メーカーからも総論的な反論が出てきて、争いは本格化していくと思われます。これまで以上に、傍聴初め、ご支援ご協力のほどよろしくお願いいたします。