建設アスベスト東北訴訟ニュース(第6号)

1 2021年7月19日(月)午後3時、建設アスベスト東北訴訟の第4回弁論が開催されましたので、同口頭弁論期日の内容・報告集会についてご報告いたします。

2 第4回口頭弁論期日

  1. まず、弁護団長沼拓弁護士が、本年5月17日に出された、建設アスベスト訴訟についての最高裁判決のうち、国の責任に関する判決の要点と意義について意見陳述しました。
    最高裁判決は、⓵建設アスベスト被害に対する国の労働関係法令に基づく規制権限不行使、とりわけ一人親方や中小事業主に対する国の責任、⓶建材企業の共同不法行為責任を明確に認める統一的判断を示したものです。
    国はこの最高裁判決を受けて、翌5月18日に、被害者及びその遺族の方々に謝罪するとともに、継続中の訴訟について和解を進める旨の基本合意書を交わす形で確約しました。また、本年6月9日に未提訴の被害者に対する補償が約束される建設石綿給付金法が成立しました。長沼弁護士は、かかる最高裁判決における国の責任に関する判決の要点を確認し、同判決後の経緯をも確認し、本訴訟でも、この基本合意を踏まえて」国との早期和解に向けて尽力いただきたいと結びました。
  2. 続いて、弁護団菅野典浩弁護士が、最高裁判決における②被告メーカーらの責任について意見陳述しました。
    最高裁の被告メーカーらの不法行為責任については、被告メーカーらの警告表示義務違反を認めるとともに、民法719条1項後段の類推適用による共同不法行為の成立を認めた上で、原告らが主張する石綿建材の現場への到達に関する立証手法を是認しました。菅野弁護士は、このような最高裁判決による原判決の変更や民法719条1項後段の解釈について説明しつつ、次回には同最高裁判決を踏まえた被告メーカーらの共同不法行為責任に関する総論的主張、原告ごとに共同行為者を特定する主張立証をする予定であることを述べました。
  3. さらに、弁護団事務局長太田伸二弁護士が、最高裁判決を踏まえた今後の訴訟進行についての意見を述べました。
    国との間では基本合意書に基づき、和解協議が中心になるであろうことを確認し、被告メーカーらとの関係では、共同行為者の特定が主たる争点になるであろうことを確認しました。また、次回期日までに、国・メーカーで共通する主張として、原告(被災者)ごとの労災資料等の基本的書証とともに主張する予定であり、さらには、被告メーカーらの共同不法行為に関する総論に関する準備書面を提出する予定であることが述べられ、第6回期日では被告メーカーが認否・反論するよう求めました。

3 報告集会

  1. 仙台弁護士会館401号室において報告集会が開催されました。
  2. まず小野寺義象弁護団長から、最高裁判決が内容において画期的なものであることが確認され、建材メーカーの責任はいまだあいまいな部分があるので、しっかり本訴訟でも主張立証していく必要があること等が述べられました。太田弁護士からは、上記の本日の口頭弁論期日の内容につき説明がありました。
  3. 会場からの発言として、仙台錦町診療所医師の広瀬先生、宮城県労働組合総連合の髙橋議長、中皮腫・じん肺・アスベストセンター事務局次長の尾形さんからお話をいただきました。最高裁判決がありましたが、いまだ自己の被害に気付かない人やどこに相談してよいか分からない人も多くいるだろうと想定されることから、被害者を掘り起こし、弁護団とのつなぎの役割に力を注いでいただけるとのことでした。

4 次回第5回口頭弁論期日は2021年9月16日(木)15時

次回以降に個別の原告の作業内容の主張立証、被告メーカーらの責任についての主張等を行う予定です。
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